規制・国際標準化

ナノ材料に関するさまざまな課題の中で、私たちは「ナノ材料の規制対応」を喫緊の課題と考えています。ISO, IEC等の国際機関において、ナノ材料の試験規格の制定や標準化作業が続けられていますが、ナノ材料は既に多くの工業製品に利用されているにも関わらず、ナノ材料に特有な毒性に関する詳細な理解には至っておらず、「危険性の分からないものは接触しなければ良い」といった予防原則を根底として、ナノ材料の利用を規制する動きが欧州を中心に起こっています。

2011年10月、欧州委員会(European Commission; EC)は規制に用いるナノ材料の公式定義を公布し、フランスでは2013年より当該定義に従ったナノ材料の輸出入時等の届け出義務が法令化されています。同定義への該否判断においては、凝集体内部の一次粒子のサイズおよびサイズ分布を評価する必要があり、その実現困難さは、同定義の適用に関して化学物質規制担当者や材料メーカー等に大きな混迷を与えています。

今後同種の規制が各国で導入されることが予想されることから、材料がナノ材料であるか否かの判定を簡便に行える評価技術が切望されているところです。本コンソにおいてもこうした動きに合わせた技術の研究開発に積極的に取組んでいます。

欧州委員会(EC)の公式定義

ECによる定義では、『「ナノマテリアル」とは、非結合状態、または強凝集体(アグリゲート)または弱凝集体(アグロメレート)であり、個数濃度のサイズ分布で50%以上の粒子について、一つ以上の外径が1 nmから100 nmのサイズ範囲である粒子を含む、自然の、または偶然にできた、または製造された材料(マテリアル)を意味する』とされています。

nanoParticle

ECによるナノ粒子マテリアルの定義モデル

上記の定義に基づいてナノ材料を計測しようとすると、計測機器には

  • 一次粒子に分解して計測可能なこと
  • 粒径が1 nm~100 nmの範囲で計測可能なこと
  • 個数基準の粒径分布が得られること

の能力が必要とされます。

しかし、現実のナノ材料は広い粒径分布を持つために、個々の粒子を直接計測できる高分解能の計測機器であっても簡単に粒径分布を求めることはできません(従来の測定方法の問題点を参照)。本コンソーシアムではそうした課題を克服するため、分級技術を中核とした「ナノ粒子複合計測システム」を提案し、測定技術の高度化とともに、評価法の国際標準化に向けた活動をスタートしています。

実際に2014年3月にブラジルにて開催されたISO/TC229(ナノテクノロジー)会議では、このようなナノ材料に対して単一の計測法ではナノ材料の粒径およびその分布を信頼性高く評価するのが困難であることを実データとともに示し、分級→計測→分布の再構成というプロセスが有用であることをアピールしました。今後このプロセスの国際標準化を含めて、開発するナノ粒子複合計測システムの普及に向けた標準化活動も継続する予定です。

国際標準化について

国際標準化機構(ISO)では、ナノテクノロジーに関する専門委員会(ISO/TC229)を2005年12月に立ち上げ、英国を幹事国(2014年現在)に一部は国際電気標準会議(IEC/TC113)との共同運営により、作業が進められています。専門委員会は以下、作業部会(WG)に共同作業部会(JWG)を加えた4部会で構成され、活動ごとに

  • JWG1: Terminology and Nomenclature (用語・命名法)
  • JWG2: Measurement and Characterization (計測・キャラクタリゼーション)
  • WG3: Health, Safety and Environment (健康・安全・環境)
  • WG4: Materials Specification (材料規格)

の4部会に分かれて運営されています。

ISOwg

ISO/TC229のWorking Group体制

また、粒子や計測について他の技術委員会とも深い関連があり、専門委員会ごとに

  • 特性評価手法:ISO/TC201(表面化学分析)、ISO/TC202(マイクロビーム分析)、ISO/TC24(粒子評価)
  • 暴露量測定手法:ISO/TC194(医療機器の生物学的評価)、ISO/TC24(粒子評価)
  • 環境、健康、安全:ISO/TC142(空気その他ガスの浄化装置)、IEC/TC113(電気・電子分野の製品及びシステムのナノテクノロジー)

などの活動が進められています。
さらに計測・キャラクタリゼーション(JWG2)では、これらの関連する技術委員会と協力しつつナノ粒子の計測・評価方法について議論が行われています。

関連資料リンク
OECD経済協力開発機構:ナノ安全